「あなたの会社はZ世代に嫌がられるような行為をしていませんか?」――そう語るのは、ワンキャリア取締役の北野唯我さん。「常に人手不足」「認知度が低い」「内定を辞退されてしまう」「外資系との給与差が開いている」といった多くの採用担当者、経営者の悩みを解決するため、北野さんが執筆したのが、著書『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』です。これまで属人的で全体像が見えなかった採用活動を構造化し、3000社以上の企業の採用支援実績、180万人の求職者のデータに基づいた「新しい採用手法」を紹介した一冊です。この記事では、本書より一部を抜粋・編集して紹介します。
内定辞退の主な理由
母集団形成→クロージング→フォローアップの各フローの中でもクロージング時の「内定辞退」は近年急激に増加し、採用担当者に最もダメージを与える最大の悩み事だ。せっかく何度も調整し、選考して決まった内定者を逃すことになるのだから、当然だ。大手でも内定を出した候補者の半分が辞退するケースはザラであり、この課題には業界、規模を問わずすべての企業が悩まされている。内定辞退を最小にするには、その理由を採用チーム全体で把握し、打ち手を考える必要がある。
・他社からのより魅力的なオファー
より高い給与、いい福利厚生、キャリア成長の機会が提示されている。
・企業文化やチームとのフィット感の欠如
面接プロセス中に居心地の悪さや不安を感じている。
・オンボーディングプロセス(入社後、会社に順応する過程)の不透明さ
入社後の期待やキャリアパスが不明瞭だと感じている。
・面接や選考プロセス中のコミュニケーションの欠如
フィードバックの不足や返信の遅れがあった。
「候補者の本心がわからなくなった」という声も多い内定辞退だが、実は原因はこの4パターンくらいに分類することができる。事前にパターンを知っておくことで、内定辞退という結果になる前に対策を打つことができる。
なお、最もNGなのが、フォードバックの遅れ。メールの返信が遅いだけで、相手の熱は冷めてしまうことを肝に銘じよう。
それぞれの不満への対策
原因を特定したら、対策をする。詳細は以下を参考にしてほしい。
・他社からのより魅力的なオファー
業界基準を調査し、可能な限り競争力のある給与を提供する。
候補者に対して企業内での成長と発展のチャンスがあることを伝える。
・企業文化やチームとのフィット感の欠如
採用プロセスを通じて企業の文化と価値観を強調し、候補者と企業とのフィット感を感じられるようにする。
内定を出す前に、チームメンバーとの非公式なミーティングやランチを設定し、相互のフィット感を確認する。
・オンボーディングプロセスの不透明さ
オファー時に、入社後のオンボーディングプロセスと初期のキャリアパスについて明確に説明する。
・面接や選考プロセス中のコミュニケーションの欠如
面接や選考プロセスの各ステージで候補者に対して定期的に情報を提供し、質問には迅速に回答する。
これらの対策は、単なる「引き留め」ではない。候補者が企業との関係をより価値あるものと感じ、内定後も安心して入社できるようにすることを目的としている。つまり、内定辞退への対応は、入社後にも響くと考えた方がいいだろう。
ちなみに、メガバンクなどは長年「リクルーター制度」を導入してきた。候補者と同じ大学出身のOBOGが学生と常にコミュニケーションをとり、クロージングする王道の手法だ。ただし、労働集約型(いわば人海戦術)であり属人的でもあるため、ここに頼りすぎない設計が必要である。
(本記事は『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』を元に抜粋・編集したものです)
株式会社ワンキャリア 取締役 執行役員CSO
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に新卒で博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。米国・台湾留学後、外資系コンサルティングファームを経て、2016年ワンキャリアに参画、現在取締役 執行役員CSO。作家としても活動し、デビュー作『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』(ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版)など、著作の累計部数は40万部を超える。
ワンキャリアは2021年10月、東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)に上場。累計3000社以上の企業の採用支援実績があり、累計180万人の求職者に利用されてきた。新卒採用領域の採用プラットフォーム「ONE CAREER」は2020年から4年連続で日本で2番目に学生から支持され、東京大学、京都大学の学生の利用率は95%となっている。