「注意したいけど、パワハラと思われたくない」。そんなとき“感じのいい先輩”はどう伝えているでしょうか?
それを語るのは、「感じのいい人」に生まれ変われるとっておきのコツを紹介する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さんです。職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…」と自分に言い訳したり。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、一歩が踏み出せないことがあるでしょう。この連載では、「顧客ロイヤルティ」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきたノウハウを、さらにわかりやすくお伝えします。本稿では、本書には入りきらなかった「気づかいのコツ」について紹介しましょう。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「注意したいけど、パワハラと思われたくない」。そんなとき“感じのいい先輩”はどう伝えているか?Photo: Adobe Stock

時間意識が低い人

 ある20代後半のビジネスパーソンから、次のような相談を受けました。

「仕事はとても丁寧なのですが、時間への意識が薄い後輩がいます。スピードアップするよう伝えてもなかなか改善せず、これ以上どう伝えたらいいかわかりません」

 後輩に成長機会を与えることは先輩社員の役割とわかっていても、「傷つけてしまうのでは?」「パワハラと間違えられるのでは?」という恐れが、その相談者からうかがえました。

 今日は、感じのいい人が実践する、相手のモチベーションを保ちつつ効果的にフィードバックを行う方法を2パターンご紹介します。

「3つの要素」を使う

 一つめは、「SBIフィードバック」と呼ばれる伝え方です。
 これは、Situation(状況)、Behavior(行動)、Impact(影響)の3つの要素を使って具体的に伝える方法です。

(例)
 先週依頼した業務ですが、さらに良いアウトプットができるよう、話したいです(状況)。
 仕事はとても丁寧で質が高かったですよ。ただ、進捗に時間がかかってしまいました(行動)。
 これから繁忙期に入ると、現状のスピードでは納期に遅れることもあるかもしれません。自分にとっても、それは避けたいですよね。(影響)。
 品質を保ちながら効率を上げる方法を、一緒に考えてみませんか?

ポジティブでネガティブを挟む

 2つめは、「サンドイッチフィードバック」という方法です。
 ポジティブなフィードバックと、ポジティブなメッセージの間に、建設的な改善点を挟み込む伝え方です。

(例)
 仕事の精度が上がってきたね。
 特に、資料の内容がわかりやすくて、次の会議でもお願いしたいと部長も言っていたよ。
 次は少し効率をアップしよう。タスクの優先順位を見直すのがいいと思う。よければ、相談にのるよ。一緒にがんばろう。

 以上です。

「傷つけるのでは?」ということばかり心配していると、後輩の成長機会を失わせることになるばかりか、業務に滞りが生まれ、自分にもストレスがかかってきます
 ご紹介したフィードバック法はどちらも、モチベーションを保ちつつ具体性があるので効果が期待できます。

 冒頭にご紹介した相談者も、さっそく実践し一定期間効率アップの伴走をしたところ、後輩社員に改善が見られたそうです。
 同じ悩みを持っている方も、ぜひ勇気を出して活用してみてくださいね。

(本記事は、『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏が特別に書き下ろしたものです。)

川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。