定年前後の決断で、人生の手取りは2000万円以上変わる! マネージャーナリストでもある税理士の板倉京氏が著し、「わかりやすい」「本当に得をした!」と大人気になった書籍が、2024年の制度改正に合わせ改訂&パワーアップ!「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」として発売されました。本連載では、本書から抜粋して、定年前後に陥りがちな「落とし穴」や知っているだけでトクするポイントを紹介していきます。

【税理士が教える】年金「繰り上げ」がおすすめな人、「繰り下げ」がおすすめな人Photo: Adobe Stock

損益分岐点年齢を知った上でどう選ぶか

 本書では、年金を「繰り上げ」「繰り下げ」した場合の損益分岐点年齢と具体的な損得の計算の仕方を説明しています。それを踏まえた上で、実際ご自身の場合、どちらを選んだほうがいいのかを考える時の参考にしていただきたいことを紹介します。

「元気なうちにもらう」も一つの考え方

 「何歳から年金をもらうか」は、最終的にはライフスタイルや価値観によるところも大きいと思いますが、私個人としては少しでも若く元気なうちにもらって使いたいと思っています。

 というのも、幼いころから添加物の入った食べ物を食べ、体も鍛えていない(?)私たち定年前後世代は、今の高齢者よりも健康寿命が短いのではないかと思うからです。
 寝たきりになってから、高額な年金をもらっても、逆に、税金や社会保険料・医療費の自己負担割合が増えるだけ(本書p165~参照)なんて可能性もあるわけです。

 そう考えると元気なうちにもらったほうがよい気もしますが、ただし、働きながら年金をもらう場合は注意が必要です。給与と年金の合計額が48万円を超えると、超えた分の半分の年金がカットされてしまうからです。カットされた部分の年金は後から取り戻すことはできません。わざわざ早くもらって年金をカットされるのでは、本末転倒です(詳細は本書p107~)。

 他にも「繰り上げ」すると障害認定を受けるともらえる「障害基礎年金」や自営業の夫などが亡くなった場合に受けられる「寡婦年金」の対象外になるというデメリットがあります。

繰り下げが向いているのは

 私のお客様でも、「長生きの家系なので、絶対長生きする自信がある!」「70歳まではバリバリ働くから、年金をもらってもカットされてしまう」という人は、繰り下げを選んでいます。
 ただし、注意したいのは、年下の妻や18歳未満の子がいる場合にもらえる「加給年金」(本書p83~参照)が、「繰り下げ」をしているともらえなくなってしまうこと。その場合の裏ワザは、次の項で紹介します。

 ちなみに、夫が亡くなった後に妻がもらう「遺族年金」は、65歳で払われる原則の金額から算出されます。「繰り上げ」、「繰り下げ」をしていようと、金額は変わりません。この話をすると「遺族年金が変わらないなら、夫の年金は、早く死んでも損をしない『繰り上げ』のほうがよさそうね」という女性陣も少なくありません(笑)。

9割以上が“65歳から”を選ぶ

 2020年の厚生労働省の6月調べでは年金を繰り下げ受給したという人は国民年金と厚生年金の両方の平均から見てもたったの1.1%。一方繰り上げした人も5.3%と少数。
 圧倒的多数の93.6%の人は65歳からもらい始めています。
 それだけ自分でジャッジするのはむずかしいということなのかもしれません。

 *本記事は「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」から、抜粋・編集したものです。