「富裕層課税」でG20宣言
租税回避はどこまで抑えられるか
「永遠の旅行者(Perpetual Traveller)」という言葉を覚えているだろうか。
どこの国の居住者にもならないことで得られる政府から自由なライフスタイルとされ、課税に敏感な富裕層の間では租税回避策として注目されてきた。
日本でも、「20億の資産を息子ではなく孫に相続させたい。ただし1円も納税せずに」という老資産家の依頼を軸に物語が展開する橘玲氏の小説「永遠の旅行者」(2008年)で知られている。
今年7月のブラジル・リオデジャネイロでのG20財務相・中央銀行総裁会議では、各国が富裕層課税に取り組むことが全会一致で宣言され、金融所得軽課税の恩恵やタックスヘイブンに資産を移すことで税負担を免れている超富裕層の資産に一律2%の税率で課税する経済学者の案が提出されるなど、富裕層の税負担適正化に向けた国際的な取り組みも動き出した。
富裕層への課税強化はどこまでできるのか。あるいは進めるべきなのか、国境を越えた人材や資金の移動はイノベーションにとって重要なだけに悩ましいところだ。