円安に伴う輸入物価の再上昇が、物価の上振れリスクを強めている。2%の物価上昇率が実現する確度が高まれば利上げを行う。これが日銀の示した政策方針だ。一見、自然に映るだろう。
しかし改めてデータを振り返ると、基調的な物価上昇率を測定する指標は軒並み鈍化している。4月の展望レポートの発行時点と比べると、市場参加者は軒並み物価見通しを引き下げていた。また、7月の金融政策決定会合の時点と比較すると、4月や6月の会合時点の方が、より強力な円安基調が残存していた。ここに(経済環境の変化に対して金融政策がどのように変化するかを示す)政策反応関数の非連続性が生じ、市場をいっそう動揺させた可能性が高い。
金融政策の不確実性は、実体経済にも影響を与える。資本コストの前提が不透明な中では、事業投資を手控える動きが広がるためだ。
もちろん、金融政策の多角的レビューが鋭意進められている現在、政策反応関数の建設的な修正は歓迎される。重要なことは、政策反応関数の在り方を明快に示し、市場と丁寧な対話を行うことだ。開始から1年以上が経過した多角的レビューの総括が近く行われ、金融政策を巡る不確実性の低下に寄与することを期待したい。
(みずほ証券エクイティ調査部 チーフエコノミスト 小林俊介)