ハーバードビジネススクールの研修旅行で日本を訪れた同校助教授のキャロリン・フーさんは、さまざまな日本の長寿企業を視察する中で、あることに感銘を受けたという。それは、長寿企業が伝統を守りながらも、機敏に変化に対応する力を持ち合わせていたことだ。日本企業に学んだ「伝統を守りながらイノベーションを起こす」極意とは。(取材・構成/作家・コンサルタント 佐藤智恵)
>>前編『来日10回以上の“日本通”ハーバード教員が毎回感動する「東京みやげ」とは?』から読む
日本の長寿企業に学んだ
「伝統を守りながら変革し続ける」方法
2024年6月16日から22日までの研修期間中、私たち教員は14社の企業(外資系企業も含む)を訪問しましたが、スタートアップ企業から長寿企業まで、総じて日本企業には共通する3つの特長があることに気付きました。
1つめの特長は、製品への愛着とものづくりへの強いこだわりです。スタートアップ企業の方々も、長寿企業の方々も、皆、自社の製品、技術、ものづくりのプロセスについて深い知識を有していたことに感銘を受けました。
2つめの特長は、どの企業も「アジャイル」であることです。特にスタートアップ企業だけではなく、長寿企業も、変化に機敏に対応する能力を備えていたことには、驚きました。
一般的に、歴史の長い企業は、伝統にこだわるあまり、変化に迅速に対応できないのではないかと考えられていますが、私たちが訪問した長寿企業はいずれも伝統をうまくイノベーション創出に生かしていたのが印象に残りました。
例えば、6月17日に訪問した山本山から学んだのは、「伝統を守りながら変革を起こし続ける手法」です。何を守って、何を進化させているのかが、山本山の334年の歴史を見ればよく分かります。