2024年6月、ハーバードビジネススクールの教員33人が、同校の研修旅行で日本を訪れた。このプログラムに参加したハーバードビジネススクール助教授のキャロリン・フーさんは、これまで通算10回以上来日したという大の“日本通”だ。そんな彼女が研究者としても日本に興味を持った理由とは何だったのか。また、ハーバードで密かにファンが増えているという「東京みやげ」とは?(取材・構成/作家・コンサルタント 佐藤智恵)
通算10回以上来日した“日本通”
なぜ改めて日本に行きたいと思ったのか
私が日本への研修旅行に参加した動機は主に2つあります。1つは、もともと日本を旅行するのが大好きなこと。シンガポールで働いていたときは、家族でほぼ毎年、スノーボードをしに北海道のニセコを訪れていましたから、通算すると10回以上は行っているのではないでしょうか。
もう1つは、これまで日本企業に関心があったにもかかわらず、深く研究したことがなかったので、いつかイノベーション戦略の観点から日本企業を研究して、ハーバードビジネススクールの教材(ケース)を書いてみたいと思っていたこと。
こんなに何回も日本に行ったことがあるのに、なぜわざわざ参加したのかと疑問に思うかもしれませんが、旅行者(消費者)の視点から見る日本と、研究者の視点から見る日本は、きっと全然違うだろうと思ったのです。2024年度の教員研修が日本で実施されることが発表されるやいなや、すぐに参加することを決めました。
日本に行ったら特に訪問してみたいと思っていたのは、芸術に関わりのある企業、最先端のテクノロジー企業、それから長寿企業です。
芸術系とテクノロジー系の企業に強い関心を抱いているのは、常に変わり続ける環境の中で、イノベーションを創出しつづけなければならない分野だからです。これまでも、バレエ、オペラ、ビデオゲーム、量子コンピューティングなどを対象に、いかに「イノベーションエコシステム」との相互作用によって斬新な作品などを生み出せるのかを研究してきました。
また、長寿企業に興味を持ったのは、歴史が古ければ古いほど、伝統に縛られ、イノベーションを創出するのが難しいのではないかと思ったからです。私はシンガポール出身なので、いわゆる長寿企業にはあまりなじみがありません。日本に行ったら、ぜひとも長寿企業を訪問したいと思っていました。