これもまた、日本銀行が打ち出した新たな金融緩和の効果なのか。とある格付け会社が、不動産投資信託(J-REIT。以下、リート)からの“人気”を独り占めしている。

 日本格付研究所(JCR)がそれだ。4月11日、東急リアル・エステート投資法人は米ムーディーズの格付け(A3。上から7番目)を取り下げると同時に、JCRでAAマイナス(同4番目)を取得。このほかのリートもJCRに関心を示している模様だ。

 背景には、日銀のリート購入の増額がある。白川方明・前日銀総裁下でもリートは100億円の追加購入(2013年)が予定されていたが、黒田東彦新総裁下では、初の金融政策決定会合(4月4日)で毎年300億円と一気に3倍に増額。「大方の予想を上回る規模」(石澤卓志・みずほ証券チーフ不動産アナリスト)となり、市場にサプライズを与えた。

 実はJCR人気は、日銀がリート購入を開始した10年10月から続いている。これ以降に上場した銘柄は、すべてJCRだけで格付けを得ているのだ。

 なぜか。それには日銀がリート購入に課した条件が関係している。

 日銀には個別銘柄について5%までしか保有できない、いわゆる「5%制約」があり、購入対象も「格付けAA格以上」と厳しい要件を設けている。結果として購入は上位銘柄に限られ、市場を極端に歪めることはないはずだ。

 ところが、である。AA格は格付け会社1社でも取得していればよいため、「格付け判断が甘い」(不動産業界関係者)と言われるJCRにリートが吸い寄せられているというから皮肉なものだ。

 実際、JCRも含めた複数の格付け会社から格付けを取得している11銘柄すべてが、JCRから最上位の格付けを得ている。

 結果的に、JCRだけがAA格以上を与えたことで日銀の購入対象条件を満たす銘柄は15銘柄と、全体の約4割にも上っている。