この手紙は本当に被害者の父親が書いたものなのか?
筆者の知る限り、これを読んだ中国人の多くは「涙が流れた」「本当に申し訳ない」「お気の毒すぎる」などと声を挙げている。中国人はもともと子ども好きが多いから、まさに事件にショックを受けた人たちの涙腺を刺激するような言葉が並んでいる。
その一方で、日本での報道に触れてきた日本人は、きっと驚くのではないか。「なぜ、ここまで寛容になれるんだ?」と。そして、「これは中国人が書いたニセ手紙ではないか」と思い始めるかもしれない。
実は筆者も、突然の我が子の衝撃的な死からわずか2日目に実の父親がこれを書いたとは信じられなかった。それも、日本人の父親が、日本人に向けて中国語で書いているという点が腑に落ちなかったし、その内容の想像を超える寛容さがただただ不思議だった。
なぜ父親はまず日本語で伝えようとしなかったのか? いや一部で言われているように中国語に翻訳されたものならば、日本語の原文はどこにある? このような声明が日本大使館の手を経て、あるいは日本メディア、またはSNSなどを通じて、なぜ日本社会に向けて発表されないのか?
……疑問は数々あった。そして同様にその真偽に疑問を持つ友人ジャーナリストたちとチャット上で議論をしつつ、情報交換を続けた。その結果、次第に情報が集まり、それによって疑問が解けた結果、筆者は今、この手紙は父親が自ら中国語で書いたものであり、日本語版はもとより存在しないという確信にほぼ至っている。