東京モノレールが世界で初めて
アルヴェーグ式を用いた理由

 アルヴェーグ式はその後も万博会場やテーマパークの交通手段として採用が相次いだが、本格的な都市交通機関としての採用には至らなかった。そんな中、アルヴェーグ式を用いた世界初の都市交通機関として開業したのが東京モノレールだった。

 ヴェナーグレンは大正時代、ヨット世界一周旅行で日本に寄港したことがあり、その時に宿泊した帝国ホテルをいたく気に入っていた。戦後に来日した際は自分が育てたいとして日本人ボーイを連れて帰ったほどの思い入れだった。そんな縁から彼は1953年4月、帝国ホテルの社長・犬丸徹三に手紙を送り、モノレールを売り込んだ。

 しかし、犬丸はモノレールなる言葉を聞いたこともなく、技術的な可能性も判断できなかったため、日産自動車や日立製作所を傘下に収めていた戦前の新興財閥「日産コンツェルン」の総帥だった鮎川義介に相談した。

 鮎川が興味を示したことで同年6月、日本の運輸関係者、鉄道技術関係者を招き、ドイツ人技師同席のもと説明会を開催した。やはりモノレールは人を魅了する。参加者はいずれも強い感銘を受け、日立がアルヴェーグ式のライセンスを取得してモノレール事業に参入することになった。