企業による投資の実態とその成果を見る上では、「キャッシュ・フロー計算書(CF計算書)」が役に立つ。今回は、ドン・キホーテを手掛けるパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスと、いきなり!ステーキを運営するペッパーフードサービスのCF計算書から、「良い投資」と「悪い投資」の違いを見ていこう。(中京大学国際学部・同大学院人文社会科学研究科教授 矢部謙介)
キャッシュ・フロー計算書で分かる
ドンキといきなり!ステーキの明暗
今回は、「ドン・キホーテ」などの小売業を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(以下、PPIH)と、「いきなり!ステーキ」などを運営する外食のペッパーフードサービス(以下、ペッパーFS)の決算書を取り上げよう。
小売と外食という異業種に属する2社だが、実は2017~19年ごろに大規模な投資を実施したという共通点がある。また、コロナ禍においてPPIHはインバウンド需要の消失、ペッパーFSは外食需要の大幅な減少という逆風にさらされた点でも共通している。
しかしながら、コロナ禍以降の業績では大きく明暗が分かれることとなった。
PPIHの24年6月期の連結決算は、売上高が約2兆950億円、営業利益が約1400億円で、前期から増収増益となり、いずれも過去最高を記録している。小売業で売上高2兆円を突破しているのは、24年8月時点ではセブン&アイ・ホールディングス、イオン、ファーストリテイリング、そしてPPIHの4社だけだ。
一方、ペッパーFSの23年12月期決算(ペッパーFSでは20年12月期以降連結財務諸表を作成していないため、親会社個別の決算)では、売上高が約145億8700万円、営業損失はおよそマイナス4億9000万円だった。22年12月期では売上高約147億7500万円、営業損失がおよそマイナス15億5500万円であったから、損失額は減少しているものの、19年12月期以降5期連続での営業赤字が継続している(19年12月期は連結決算、それ以降は個別決算)。
両社が行った大規模投資とは一体どんなものだったのか。そして、その後の業績に明暗が分かれた理由とは何だったのか。企業における現金の収支を表すキャッシュ・フロー計算書(以下、CF計算書)を使って読み解いていくことにしよう。