〈大谷翔平メジャー史上初「50-50」達成〉大谷翔平がアメリカの「野球少年の母」にとことん好かれる理由Photo:Robert Gauthier/gettyimages

 ドジャース・大谷翔平が、19日(日本時間20日)、前人未到の「50-50」(50本塁打、50盗塁)を達成した。おまけに6打数6安打、10打点、2盗塁、自身初の3打席連続ホームランまでやってのけ「51-51」とさらに記録を更新した。24日現在、自身の記録を「53本塁打、55盗塁」まで伸ばし、イチローが持つ日本人選手のシーズン最多盗塁記録まであと一つというところに迫っている。このとんでもない大谷の活躍は、いったいどこまで続くのか。実は、現地・アメリカでは日本ではあまり知られてない、大谷をめぐるさまざまな“ドラマ”がある。大谷翔平の番記者を務めた経験もある在米ジャーナリストの志村朋哉氏の著書『ルポ 大谷翔平 日本メディアが知らない「リアル二刀流」の真実』(朝日新書)から一部を抜粋・編集して掲載する。

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助手席に顔写真

 内装業を手がけるスティーブ・スミスさん(45)は、2010年からライトスタンドの年間予約席を買い続ける熱心なエンゼルスファンだ。自宅から球場まで約1時間ドライブして、2021年はエンゼル・スタジアムでのホームゲームをほぼ全て生で観戦した。

 そんなスミスさんが、「これまでの人生で最も熱狂している」と言うくらい入れ込んで応援しているのが大谷だ。エンゼルスの主砲であるマイク・トラウトでさえ「大谷ほど興奮させてはくれない」と話す。

「メジャーで投手としてやっていくだけでも、とんでもなくしんどいのに、打者としても毎日出場するなんて想像を絶する。もう二度と見られないかもしれない。だから欠かさず生で見るつもりです」

 球場に行く時は、大谷の顔写真パネルを車の助手席にくくりつけていた。いかついスミスさんの横に巨大な「大谷」が浮かぶ。そんな異様な光景に驚いた通りがかりの人に写真や動画を撮られることもあったそうだ。

「家族によくからかわれますよ」と笑って話す。

「私の枕の上に大谷の顔写真パネルを置かれたりします」

 スミスさんは、大谷のファンになった瞬間を鮮明に覚えている。大谷がメジャー公式戦デビューした2018年3月29日だ。

 長男タイラーくんの11歳の誕生日プレゼントで、敵地オークランドでの開幕戦を見に行った。オープン戦で不振だった大谷にあまり期待はしていなかったが、試合前の打撃練習を見て驚愕した。