団塊世代の死亡率上昇で
相続大量発生は本当なのか
団塊の世代は1947年から1949年頃に生まれた人で2024年現在75~77歳になる。日本の歴史で最も出生人口が多かった、いわゆるベビーブーマーだ。
日本人の平均寿命は男性80歳、女性87歳なので、2030年頃には亡くなる確率が高い。このタイミングで大量の相続が発生するが、相続人はすでに50~60代を迎え、自宅の持家率は高い。そうなると、戸建用地の売却数が大量に出て、需給バランスが悪化し、地価が下がる。
このストーリーはよくできた話である。自分の持ち合わせた知識、因果関係、経済合理性などと符合し、実現可能性が高そうで、話が違和感なくスーっと入ってくる。ストーリーというのは人間が伝播しやすいように作られている。そこには人間が信じ込みやすい「魔力」のようなものがあるのだ。
しかし、ストーリーに騙されてはいけない。現実はストーリーとは全く違うこともある。では、それを立証してみよう。
日本は少子高齢化で、死亡人口は右肩上がりで、出生人口は右肩下がりになっている。それは2007年前後で逆転し、今後の再逆転はない。死亡人口は2000年の96万人から2023年の149万人にほぼ一直線で増え続けている。社会保障人口問題研究所によると、今後も増え続け、2040年に167万人でピークとなり、その後は緩やかに減ると予測されている。
分かりやすくするために、2000年を基準(=100%)として比較すると、2010年は124%、2020年は143%、2030年は166%、2040年は173%となる。10年間の伸び率は下がっているので、死亡数の急増はすでに起こっていることになり、突出した相続ピークが起こることはない。なぜなら、人は平均寿命の年齢きっかりに亡くなるわけではなく、その前後10年以上のスパンで分散するからだ。
では次に、土地の売却数は死亡数に準じて増えるのかを検証してみよう。不動産の売出・成約の売買データが集積するのが、東日本流通機構が保持する不動産業者のデータベースだ。