「タワマン恐慌」を招きかねない、建築費暴騰の看過できないリスクとはタワーマンションに迫るかつてないリスクとは(写真はイメージです) Photo:PIXTA

マンションの建築費が暴騰中
構造安全性への不安が募る背景

 不動産開発をする業界において、現在最大の問題は建築費の暴騰である。住宅着工統計によると2013~23年度の10年で約6割上がってきたが、この1年で請負単価がさらに何割か上がるほどの激変となっている。

 それは大手ゼネコン、清水建設の決算発表にも表れている。2024年3月期の連結決算で営業損益が246億円の赤字となり、1961年の株式上場以来初めて通期での営業赤字となった。資材価格の高騰と人手不足の中での労務費の増加が想定を上回るスピードで進んだのが、その理由だ。大手ゼネコンが受託の際に想定できないほどの建築単価の高騰が起きているのである。

 そんな中、2024年4月に発覚したのが、清水建設が施工した東京都中央区にある新築タワーマンションのコンクリート強度不足のニュースだった。強度不足が確認された柱の柱脚部分の再施工が完了し、構造安全性については第三者機関の性能評価を受けたので、事なきを得た形になっている。

 過去にも、施工ミスで鉄筋が切断されたことによる強度不足や、杭が固い地盤に届いていないケースなどがあったが、それらは個別物件での不祥事として片付けられてきた。しかし、こうした構造安全性に支障を来すほどの施工ミスは、実は建設業界全体に蔓延しているのかもしれない。

 建設業界の有効求人倍率は5~10倍で、人手不足は10年ほど前から恒常化している。バブル崩壊後、20年以上不況業種だったこともあり、熟練工が激減し、最近になって外国人の受け入れを増やしているが、追いつかない状況は変わっていない。

 これ以外にも、単価が上がる要因がある。新築は2025年4月竣工分から省エネ基準が適合されるため、耐震等級を5以上にしなければならなくなっている。建築単価は上がっているので、どこかのコストを削っている可能性は高い。それが耐震強度であるとすると、そのツケはいつかやって来るかもしれないと危惧している。