2001年以降に首都圏で売り出された戸建用地の在庫数は最小6630、最大1万4363の間にあり、平均1万件で安定している。首都圏の死亡人口は、2001年の21万5756人から2023年の39万2407人へと1.82倍になっている。相続が発生しても、土地の売却件数は増えたりはしていないのである。統計的には、相関係数が▲0.1で、相関性がないということになる。

 こうなる理由を調べた結果がある。国土交通省は空き家の所有者に今後5年間での利用意向を調査している(令和元年空き家所有者実態調査)。その結果は、売却意向は17.3%、賃貸意向は5.3%で合計でも22.6%にしか達していない。

 実際、売却や賃貸をするなら、家財道具をすべて処分する必要があるし、リフォームも必要かもしれない。また、相続人の間で意見が割れて、先送りになるかもしれない。つまり、これは利用意向なので、実際に実行に移す確率はもっと低くなる可能性すらあるのだ。

「空き家になったら解体して更地」は
人の心理として正しいのか

 では、利用意向で最も多いのは何か。これについては、空き家にしておく(28.0%)、セカンドハウスなどとして利用(18.1%)と、合計で46.1%の半数弱が「放置」しているのが現状となる。差し迫った締め切りがない場合、人は何もしない確率が高いのは、小学生の夏休みの宿題と似ていて、大人になってもあまり変わらないようだ。

 空き家所有者がいたら、「解体して更地にして売却するのがいい」と私だって専門家として進言するが、人間はそれだけでは動かないものだ。空き家の売却は、少しハードルが高いかもしれない。

 思い立ったら個人的にはすぐにでもやれることとして、ふるさと納税がある。2000円を払えば、年収200万円の方で、2万2400円ほどの寄付ができる。その3割相当となる6700円の買い物ができるので、自分の好きな商品を選び放題で5000円近くお得ということになる。

 経済合理性だけで考えると、ほとんどの人がやっていてもおかしくはないと思いがちだが、実際にやっている人は納税義務者の16%しかいない。ここから、人間は経済合理性で動くわけではないことが分かる。