「よくできたストーリー」に
騙されない二つのこと
そこで、よくできたストーリーに騙されないために、二つやることがある。
一つは、科学的に真偽を検証することだ。日本の死亡人口は2023年比で2030年は7%しか増えず、今と大して変わらないことが分かった。そして、空き家を売却する人は17%ほどしかいなかった。
二つ目は、人間行動の理解だ。人間は追い込まれないとやらない動物なのだ。ふるさと納税の利用者は16%だった。これはふるさと納税に係る寄付金税額控除をした数を納税義務者で割っているので、実態に近い。
しかし、アンケートを取ると37.6%だったりする。これはサンプルの偏りがあることを表している。人間の思考(例:経済合理性)と行動は矛盾する前提で、現実をつぶさに観察し、実現可能性の高い行動に着目する必要があるのだ。
将来予測はその結果が出るまでに、やや時間がかかる。しかし、スポーツは毎日勝敗が決まるので分かりやすい。最後にその例を挙げておこう。
メジャーリーグで統計(セイバーメトリクスと言う)を活用して、無名選手たちを集め、アスレチックスは20連勝して、地区優勝を果たした。その奇跡のようなできごとは、『マネーボール』(主演:ブラッド・ピット)という映画になった。
その因果関係は簡単に言うとこうだ。打率はあまり良くなくても出塁率(四死球を含む)が良い選手を使うと、出塁が増えるので得点が増え、得点が増えるので勝率が上がるというものだ。チーム内でもまずスカウトが反対し、監督・コーチがその起用法に反旗を翻す。しかし結果を出せば、それが常識に変わっていく。
私はこうした方法を不動産の予測に応用している。予測を「ゲーム」とすると、勝敗は当たったか否かで考えなければならない。そのために、勝敗に至る「因果関係」を深く理解して、それに関与する人々がどのような行動に出るかを推量しておく。
孫子の兵法と同じで、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」となる。予測で未来を知ることができれば、そこから逆算して勝つ確率を上げることができる。こうして、筆者が主宰する「住まいサーフィン」の会員は99%が含み益を出している。
これは、会員が売りに出す目的で自宅査定した結果で、成約ベースの売却想定価格と残債を比較したものだ。こうした方法は仕事でもスポーツでも応用することができる。勝ちにとことんこだわると、こうした戦略を構築し、勝率を上げることができるのだ。
(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)