「マズいんだよ!給食業者を変えてくれ」
新支店長からの無理難題の「ムカつくリスト」

 次の朝。副支店長から支店長室に来いと内線が入った。

「副支店長、本当に呼び出すんだな…」

 支店長室のドアをノックし、部屋に入る。

「預金課は目黒課長だったな。よろしく。目黒課長には、お願いしなくちゃならないことがてんこ盛りなんだわ。あんたには職場環境を改善してもらわにゃ。この2週間、やりにくいのなんのって」

「何か不都合、ございましたでしょうか?」

「すぐ動いてもらいたいんだが、いいか?まず、食堂。君たち、よくこんな昼飯で仕事できるね?気が知れんよ。マズいんだよ!作ってるオバサンが悪いんなら、気分転換に業者ごと変えちゃえよ。その方が手っ取り早いだろ?給食業者を変えてくれ」

「こちらの給食業者は20年以上にわたってうちの昼食を…」

「オレの第一印象でマズいんだから、皆もマズいと思ってるさ」

「支店長の気に入らないメニューなどあれば、責任者に伝えますが」

「全部だよ!おいおい、まだ『ムカつくリスト』の1つ目しか話してないぞ」

「後は何か?」

「おう、この支店長室なんだけど。この革張りの応接ソファとテーブルを見て、何か思わない?」

「いや、特には…」

「ダセェんだよ。下町の中小企業みたいなコテコテの感じがガマンならないんだよね。分かるかな?モダンリビングみたいな、ITベンチャーみたいな、アカ抜けた感じにだな…」

「はあ…」

「3つ目。あんたもだけどさ、白いワイシャツ禁止。いかにも昭和の銀行員って感じが、なんかもうムリなんだよね。昼休みに屋上でバレーボールとかやってそうなカッコでさ。クリエイティブなアイデアとか沸かないでしょ?」

「はあ…」

「最後。歓送迎会の時に何人かタバコ吸ってるヤツ見たよ。禁煙な。オレ、禁煙して3カ月。仕事中にタバコ吸いに行くヤツ、ムカつくんだよ。タバコやめて分かったけど、カラダ調子いいぜ。だから、やめさせて。屋上の灰皿、撤去な」