前支店長の全否定から始まる
「空気の読めないストライカー」

 前支店長が去った翌日から、「空気の読めないストライカー」は全開で突っ走る。まず、前支店長の全否定から始まる。「前の支店長がこうしろと言ったから」という返答は通じない。「支店長はオレだ」と、全てを自分のやりたいようにカスタマイズする。

 その変更に躊躇(ちゅうちょ)したり、対応が遅れたりした課長は、第一印象で即アウト。戦々恐々だ。その夜、副支店長から内線電話が入った。

「ちょっといいか?」

 声のトーンが暗い。

「支店長車って簡単に買い替えできるのかな?」

「簡単にはいかないですよ。事故や故障で走れなくなったのなら分かりますが。何かあったんですか?」

「日産しか乗らないんだとさ」

「は?」

「支店長は日産しか乗りたくないらしい」

「ああ、今の支店長車、確かマークX…ああ、トヨタですね。でも、変えるなんていくらなんでも難しいですよ。第一、変更する理由がまずないし…」

「なんだよ!できる方法、考えろよ!それがあんたの仕事だろ!」

 興奮して逆上する副支店長の様子から、同じセリフを支店長から言われたのだろうと察する。

「あー、もうさ、明日、一緒に支店長の話を聞けよ!まだまだたくさんあるんだよ、オレだってうんざりだぜ。ストライカーさん、初日から結構な運動量だな。そんなに走っちゃ、任期の2年はもたないぜ」