しかし、これには否定的なコメントが寄せられるなど、当時は研究者の間で議論が交わされていました。

 歴史ある指比の研究ですが、そもそも、なぜ胎児期の男性ホルモン分泌量が指の長さに影響するのか、具体的なメカニズムは未だに明らかになっていません。大変多くの論文があり、指比と身体能力、迅速な判断能力、顔立ちの均整、女性にモテるか? などとの関連が見出されています。

 一方で、これらに相関はない、再現性がないことを示した論文もいくつかあります。

人差し指と薬指、どちらが長い?『「Y」の悲劇 男たちが直面するY染色体消滅の真実』
黒岩 麻里 (著)
定価1,980円
(朝日新聞出版)

 研究対象グループと比較対象グループ間で有意な差が見つかれば研究報告として成り立ってしまうので、その研究から傾向が見出されたことは事実としても、その知見を私たちの実社会や生活にそのまま還元することには慎重になるべきです。

 さらに、指比に影響する胎児期のホルモンは、男性ホルモンの分泌量だけでなく、男性ホルモンと女性ホルモンの比率が関係することを明らかにした研究もあります。また、手の平側から測定した指の長さよりも、手の甲の側から測定した長さの方が相関性が高い、といったものもあります。指比研究はとても面白いですが、まだまだ検討されるべき課題がある分野のようです。

 私たちの性は、基本的には、ここで説明したメカニズムでつくられていきますが、実際にはこの通りにならない場合も大変多く知られています。

AERA dot.より転載