ですが、組織風土の面においても、また各種の制度においても、いわゆる慣れ親しんだ、似た者同士間での行き来、つまり「メンバーシップ企業間での転社」なら、まだ安心できると思ってきたのが、「ジョブ型」転職以前の姿です。ただ、これからはそうとばかりはいえなくなりそうです。

 日本企業における「メンバーシップ型」での雇用制度とは、同期生を中心とした会員制クラブそのものです。入会にあたって、厳しい審査(書類審査に入社面接試験など)がありますし、何より「卒業と同時に一斉に新卒で入社した者」のみが、「わが社の正統な文化を伝承する者である」との暗黙知が浸透しています。

グローバル化の波を乗り切るため
「ジョブ型」転職は大きく変わる

 さらにそこから、「同じ釜の飯を食った仲間」として時間と経験を共有することで、「苦楽を共にしてきた」という共通認識こそが、何ものにも代え難い、強い「擬似家族の一員としての価値観」を創出してきました。

 ですから、たとえ縁あって中途転職してきた人間であっても、また能力と経験値がいくら高くても、「もとより会員資格がない」と見なされても仕方がないと思われてきました。