東大生の就職先としても注目され、人気が高いコンサルティングファーム。一流のファームでは、どんな採用基準で人を見ているのか?『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』の著者であり、コンサルティング業界に特化したエージェントとして、17年間転職支援をしてきた久留須 親(くるす ちかし)氏に、その傾向の変化を聞いた(書籍から一部を抜粋・編集して掲載しています)。

 転職・就職活動で、最初に着手するのが書類作成です。書類では、主に第2章で紹介した「ハード面」(学歴、年齢、職歴)を見られます。工夫して作成することで、次の段階の面接対策を兼ねることもできます。

 コンサルティングファームを受けるにあたって必要な書類は、
・履歴書
・職務経歴書
・(必要なら)志望動機書
・(必要なら)英文レジュメ
です。
 今ではほとんどが、履歴書と職務経歴書の2つだけで済みます。

 2000年代までは、ほとんどのファームが志望動機書も必須としていましたが、2010年代に各ファームがこぞって積極採用し始めた頃から、応募のハードルを少しでも下げるために、応募時の志望動機書を不要とするファームが増えてきました。その結果、今では志望動機書を必要とするファームは極めて少なくなっています。

 また同様に、英文レジュメが必要なファームもごくわずかです。マッキンゼーのように社内公用語が英語であるファームか、まだ日本法人の規模が小さくパートナー陣に外国籍のコンサルタントが多いファーム(実質的に社内公用語が英語)、または大手ファームであっても、特定の部門のリーダーが外国籍で部門内の公用語が英語になっている場合など、書類選考を行うコンサルタントが日本語を使えない場合に限られます。

 では、それぞれの書き方について説明していきます。

履歴書:志望動機や職務内容を書くのは「蛇足」

 履歴書は、JIS規格の一般的なフォーマットのもので問題ありません。ただし「志望動機」や「本人希望記入欄」など、履歴とは関係ない覧は記載しないでください。
そもそもの「書類の定義」を考えれば、履歴書には個人情報と学歴、職歴、賞罰、資格が記載してあれば十分です。職務内容を詳しく書きたかったら職務経歴書にまとめればよく、志望動機を書類で伝えたければ志望動機書を作成すべきですので、履歴書にあれもこれも記載してしまうのは、蛇足以外のなにものでもありません。

職務経歴書:一番伝えたいこと(結論)から簡潔に

 職務経歴書作成の目的は、ただ「書類選考を通過させること」ではありません。職務経歴書作成を通して「コンサルティングへの理解を深める」こと、「面接対策を兼ねる」こと。この2つが重要です。

 コンサルタントの基本かつ重要な考え方は「ロジカルシンキング」です。職務経歴書という最初のアウトプットからロジカルシンキングをしっかりと意識することで、職務経歴書全体がMECE、ロジックツリーの構成となり、読み手にとってわかりやすくアピールできる書類に仕上がります。そして「コンサルタントの考え方」で書類を作成することにより、ロジカルシンキングを鍛えることができます。

 職務経歴書をしっかりと作成することは、同時に面接対策にもなります。コンサルティングファームの場合、書類選考、面接を行うのはほとんどがコンサルタントです。ロジカルシンキングを意識したほうが、これから一緒に働く人に向けて、アピールになることはいうまでもありません。
ところが残念なことに、世の中に出回っている「職務経歴書」のテンプレートは、そのほとんどがロジカルに考えられていません。大手人材紹介会社のひな型ですら、私からすると、疑問に思うものばかりです。

 例えば、「活かせる経験・知識」などと「自己PR」という項目が両方記載されているものがありますが、似た項目が重複していて、MECEではありません。さらに、このような「強み」の欄は、職務経歴書の最後に記載するよりも上方に記載したほうが、読み手(書類選考担当者)に対して結論(職務経歴書で一番伝えたいこと=強み)が先に伝わってアピールになります。「職務経歴概要」で職歴全体の結論を伝え、その次に強みを記載することで、一番伝えたいアピールポイント(経験、スキルなど)を読み手にすぐ伝えることができます。

 また、ただ漫然とやったことや成果を箇条書きで羅列しているのも見かけます。コンサルタントの仕事は「問題解決」です。「どのような問題を解決したか」「どのような問題意識を持って業務に取り組んできたか」に焦点を当てて記載したほうが、問題解決力のポテンシャルをアピールすることができます。

志望動機書:想いではなくロジック重視

 志望動機=コンサルタントを志望する「理由」なので、ここでもロジックが極めて重要になります。読み手が「なるほど、それなら確かに他の業界ではなくコンサルですね」と納得する内容を記載する必要があります。面接で必ず志望動機は聞かれますので、もし既にしっかりとした志望動機書を作成済みであれば、志望動機書の内容をそのまま話して大丈夫です。

英文レジュメ:形式重視

 英文レジュメは職務経歴書とは異なり、ほぼ形式が決まっています。また、記載する内容も職務経歴書と比較するとかなり簡潔になります。既に職務経歴書を作成していて英語が問題ない人であれば、それほど時間をかけずに作成することができます。ただ、英文レジュメ独特の記載方法や言い回しはおさえておいてください。

(※本記事は、『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』から抜粋・編集したものです)