子どもたちが憧れるような
日本代表になりたい

「田中選手、常々子どもたちが憧れるような日本代表になりたいとずっとおっしゃってきました。その夢、かなったんじゃないですか?」

 田中の顔が歪んだ。

「ホントにいまも、たくさんの子どもたちがぼくたちを応援してくれて、ありがとうって言葉を言ってくれるのが、ホントに嬉しいです」

ラグビー元日本代表・田中史朗が「最後のワールドカップ」で南アに完敗、その夜に流した「幸せの涙」『田中史朗 こぼした涙の物語』(金子達仁、宝島社)

 感情は、もちろん千々に乱れていた。それでも、伝えたい、伝えなければならない言葉は、しっかりと田中のなかで綴(つづ)られていた。「最後にメッセージを」と促された田中は、その言葉を口にした。

「これが日本ラグビーの始まりなので、トップリーグも1月12日から始まるので、これからも日本ラグビーをよろしくお願いします」

 パレードの終わりは、ゴールではない。日本ラグビーをより大きく発展させていくうえでのスタートだと田中は信じていた。この熱があれば、きっと変われる。ワールドカップ・ベスト8以上を狙える日本になれる――。

 インタビュアーに丁寧に頭を下げて、田中はテレビ画面のフレームから外れていった。田中にとって、日本ラグビーにとって、特別な1日が終わろうとしていた。