残念ながら、田中たちの望みをかなえるには、仲通りはあまりにも短かった。笑顔でパレードを終えた仲間には、テレビ局のマイクが向けられた。リーチ、稲垣、福岡、松島――ワールドカップで印象的な活躍を見せた選手たちが、如才なく質問に答えていく。

 ワールドカップでの田中は、主力として活躍したわけではない。先発出場は一度もなく、誰の目にもわかりやすいトライやゴールといった得点を記録したわけでもない。それでも、1人目を真っ赤にしてパレードを終えようとする小柄なスクラムハーフを、テレビ局としては放っておけなかったのだろう。インタビュアーが問いかけた。

「いま、どんな思いですか?」

 まるで1試合を終えたかのようなしわがれた声で、田中は答えを絞り出した。

「……いや、もう、ホントに、2011年、ぼくたちが不甲斐なくて日本のラグビーを落としてしまったという思いしかなくて、なのにこんだけのみなさんが集まっていただけて、ホントに嬉しいです。ほんっとに……」

 感極まる田中を前に、聞く側もセンチメンタルな感情が刺激されたのだろう。続けられたのは、質問というより、田中に寄り添おうとするような言葉だった。