傷つけることすらある「わかる」
安易に同調することの危険性
事件取材で、殺人犯のお母さまに話を聞き、「お気持ち、わかります」とつい言ってしまったことがありました。その後、長らく沈黙されていたので、沈黙のままで待ちました。ところが、続いた言葉は「帰ってちょうだい」の一言。語気が強く、泣いている様子でした。「あなたに何がわかるのよ!」というお気持ちだったのでしょう。
育った環境も経験してきたこともまったく違う赤の他人に、気持ちがわかるはずないですよね。ましてや、息子が殺人を犯したかもしれない母親の気持ちを、私が、簡単にわかるわけがないのです。安易に「わかる」と言うと、「あなたに何がわかるのか」と思われるだけで、相手がますます傷つくこともあります。
悲しみや憎しみの渦中にいる相手の気持ちに少しでも近づきたいと思ったら、「○○さん、おつらかったですよね」と、あなたを主語にした「Youメッセージ」で話しかけます。