持ち歌がまだ少ないひばり側からすれば「ブギを歌うなと言われたら公演が成り立たない」ことになり、笠置側は「服部ブギを歌う本人よりも先にアメリカに行って歌われては困る」ことになる。
マネジャーの福島は「ちゃんと届けて曲の著作権使用料も払う。先方から注文されて歌わなければ問題が起きる。理由を言って苦境に立たされるのは服部・笠置のほうではないか」と言って開き直り、ここぞとばかりに2世部隊記念塔建設募金の大義名分を持ち出した。
そして著作権協会の許可が出ないままひばりは渡米した。法的なことより道義的な問題だと思うが、それよりこう言い換えてもいいだろう。ひばり側は笠置が6月に渡米することを知っていて、笠置側はひばりが5月に渡米することを直前まで知らなかった、と。
実はちょうどこの頃、笠置のマネジャーが大金を使い込んでいたことが発覚した。ひばりの渡米計画に、このマネジャーがからんでいたと考えられる。