土曜日には、エルサレムの繁華街まで歩いていき、自分が働いている建物の前を通り過ぎることもたびたびあった。正面にはめ込まれた記念銘板にはドナルド・J・トランプ大統領という文字が刻まれていた。そしてブレントが驚いたのは、キリストの墓を撫でるために旧市街へ向かう途中の観光客のなかに、そこで歩みを止めてトランプの名前を撫でる人がいたことだ。

 ブレントはエルサレム東部のパレスチナ地区へ入り、肉屋に行くこともあった。ある日、人でごった返す通りを歩いているとユダヤ地区とはまったく違う感じがして、気が付くとそこに肉屋があったのだ。

 しかし必ず、自分が思っていたよりはるかに早くアパートメントにたどり着いてしまい、それから安息日が終わるまでひたすら待つしかなかった。

エルサレムに建てられた壁は
アメリカの未来を思わせる

 彼のアパートメントには広いルーフデッキがあり、町を一望しようとそこへ向かった。

 旧市街には、ユダヤ教でもっとも神聖な建造物である「嘆きの壁」と、預言者ムハンマドがここから天国へ昇ったと言われる「岩のドーム」と、「聖墳墓教会」がある。

 そしてその向こう側、つまり彼が歩いていた場所の東側には、エルサレムと西岸地区とを隔てる壁が作られていた。これは高さ9メートル厚さ30センチのコンクリート壁だ。