「斎藤知事=ヒーロー説」はなぜ生まれたのか
「あれ? あの人ってちょっと前まで『鋼メンタル』とか『サイコパス』だとかボロカスに叩かれていた人だよね。ちょっと見ない間に“巨大利権と戦うヒーロー”に変わってんだけど、どういうこと?」
そんな風に困惑している方も多いのではないか。マスコミによって「職員パワハラ」「内部告発者潰し」「企業へのおねだり」などが連日のように大きく報じられ、「早く辞めるべき」と批判の嵐を受けていた斎藤元彦兵庫県知事に対して、ここにきてネットやSNSで「がんばれ」「負けるな」という応援の声が増えているのだ。
なぜそのように評価が一変したのか。このような「説」がSNSを中心に拡散されたからだ。
「斎藤知事は港湾利権にメスを入れたことによって闇社会とそこに追随するマスゴミに潰された」
Netflixの人気ドラマ「地面師たち」を彷彿とさせるクライムサスペンスの匂いがする「説」だが、根拠となっているのは、23年3月31日の「兵庫県公報」で公表された「令和4年度 包括外部監査結果報告書 テーマ 港湾事業に関する財務事務の執行及び事業の管理」である。
この345ページにも及ぶ報告書の中には、兵庫県が管理する姫路港や尼崎西宮芦屋港など28港や県民局・県民センター、さらに「ひょうご埠頭」と「新西宮ヨットハーバー」という外郭団体の「問題」が指摘されている。例えば、こんな感じである。
「法の求める趣旨を十分に理解しないまま行われている事務や、過去の意思決定を踏襲し、その意義や目的について十分な検討が行われていない事務などが数多く発見された」(113ページ)
ちなみに「監査」が入り、問題が指摘された県民局には、知事の「パワハラ」を告発した後に亡くなった職員が局長を務めていた西播磨県民局も含まれている。
そのため、「斎藤知事=ヒーロー説」を唱える人々は、このような港湾事業の「闇」を明らかにした報復として、パワハラ疑惑が捏造されたと主張しているのだ。