奇跡は自分のなかにある、だから生まれ変わりさえすれば、きっと人生の逆転劇を起こせるに違いない――。「やればできる!」と思考が変わる話題のベストセラーが日本に上陸。31歳、一度は人生をあきらめた著者が再起できたのは、古今東西の成功者たちが持つ「6つのマインド」にあった。3000冊を超える本を読み、抽出された「プラス思考」「決断力」「切実さ」「愚直さ」「謙虚さ」「根気」を武器に、一度しかない人生、「なりたい自分」になる方法を1冊に凝縮。新刊『たった一度でもすべてをかけたことがあるか』から「自分ならできる」と信じられるノウハウを紹介する。
今回は、本書と、『勉強が面白くなる瞬間』の訳者である吉川南氏にインタビュー。両作とも人生のどん底を味わった著者がどのように苦難を乗り越えて人生をつかみ取ったのかがわかるストーリー。共通点を紐解きながら、今話題の本の魅力に迫る!(取材・構成/ダイヤモンド社武井康一郎)

自己啓発本が好きな人に読んでほしい一冊Photo: Adobe Stock

――韓国発の勉強本ベストセラー『勉強が面白くなる瞬間』『勉強が一番、簡単でした』の2冊をこれまで担当してきましたが、韓国の人たちは、勉強熱心な人が多いのでしょうか?

「勉強をやるべきだ」と思う人は多いでしょうね。「勉強する人」と「勉強しない人」ははっきりわかれています。

 オーストラリアの場合、トラックの長距離運転手でも稼げる人がいる一方で、弁護士になっても稼げない人がいる。学歴うんぬんは、年収に関係ありません。

 ただし韓国は、学歴の高い・低いが、日本以上に如実に年収に直結する。勉強をやらない人は負け組に入ってしまう。

 入学試験で遅刻しそうになると、パトカーが出動するのは有名ですが、飛行機の騒音が英語のリスニング試験の邪魔にならないように、その時間帯はソウル上空を回避するそうです。試験は人生がかかったイベントですからね。

――『たった一度でもすべてをかけたことがあるか』には、あらゆる成功者のエピソードが載っていますが、韓国での成功者の話、その人物を知らなくても、楽しく読めました。

 韓国は、財閥社会。朝鮮戦争あたりで財を成した人が一世で、いまは三世、四世。家族経営によるパワハラの横行など、社会的風当たりが強い。エリートばかり。

 そうしたなかで、苦労しながらも一代で成功する話を多く取り上げている点は、共通して特徴的な内容でしたね。自分で起業してがんばった人が多く、孫正義氏もそうです。日本の経営者も意識しているようで、松下幸之助、稲盛和夫ほか、多くの人が紹介されていますね。

――韓国の本ですが、日本人にも読みやすい内容です。仕事の分野で成功者が多く紹介されている一方で、スポーツ選手も紹介されていますね。いまやメジャーリーグの顔となった大谷翔平選手や、アジアで最多HRを打っていたチュ・シンス選手など、イチロー氏のエピソードもありました。

 イチローがいたから、チュ・シンス選手が活躍できなかったとか、日本人との比較が面白かったですね。韓国でも日本人メジャーリーガーには関心があり、イチローも大谷も人気がある。サッカー選手でも海外で活躍している日本人が好きな傾向ですね。

「いっしょにがんばっているんだ!」という「仲間意識」と「ライバル意識」があるのでしょう。

自己啓発本をあちこち手を出すよりもこの1冊でOK

――この本をきっかけに、実践したというものはありますか?

 そうですね。第3章「あなたは本当に、切実にそれを望んでいるのだろうか」の行動指針のところに「夢見る人たちと付き合う」でこういうエピソードがあります。

アフリカのコサ族には、「早く行きたければひとりで行き、遠くに行きたければ一緒に行け」ということわざがあります。ひとりでやるほうが気楽で効率的ですが、自分の限界を克服するには他の人の助けが必要だという意味です。(P143より抜粋)

 気の合った人たちとやれば、自分の力になる。
 たいへんなときも力になってくれる。

 これは私も意識して実践していますね。韓国留学時は、勉強仲間と切磋琢磨していましたし、今は翻訳の仕事で、孤独の作業が多い。カフェに行くと仕事している人がいて、「この人まだやっているからまだ頑張ろう~」みたいに応用していますね。

「運動して体力をつけろ」という話もありました。

 囲碁のプロ棋士を目指して挫折した若者、チャン・グレを主人公にした韓国の人気ドラマ『ミセン-未生-』には、次のようなセリフがあります。

夢を叶えたければ、まず体力をつけろ。お前がしばしば後半に崩れる理由、ダメージを受けるとなかなか回復できない理由、いったんミスをすると立ち直れない理由……。それはすべて体力の限界のせいだ。体力が弱いと忍耐力がなくなり、どうしても楽をしたくなる。そして疲れると、勝負などどうでもよくなってしまうのだ。勝ちたければ、最後まで考え抜けるだけの体づくりをしろ。体力がなければ、精神力などたわ言に過ぎん。(P81より抜粋)

 集中力を支えるためには、体力をつける必要がある、ですね。

 集中して考えられるということは、体力があるんだなと。訳語を考えるとき、辞書に出てくる言葉をそのまま使っても翻訳にならない。頭の中で再構成してどんな言葉にするのか。体力がないとできないので、頑張ろうと改めて体力の必要性を感じました。

 また、私にも麻雀やパチンコにはまっていた時期がありまして、大学もあまり行かずに、自堕落な生活をしていました。

 そんなとき、韓国の民主化のデモのニュースを目にし、同じ年代の人が、国のために何かやっている姿を目の当たりにして、「自分はこのままでいいのか」と衝動に駆られる思いでした。それから、韓国に急に興味を持ち、韓国の勉強を始めたわけです。それから麻雀もパチンコもピタっととまりました。

――著者が経験したようなことをまさにやっていたのですね。自身と重なる部分がみえてきたのでは?

「それをやめようとするよりも自分の打ち込めることをさがす」

 非常に大事だなと思いますね。

――この本は、どういう人が読むといいでしょうか? また、どう読んでほしいですか?

 目的がなかなかつかめず、悩んでいる人が多いと思います。自己啓発本をあちこち手を出す人も多いと思いますが、いろいろな本のエッセンスが凝縮されているので、これを読んでおけばOK。

 それぞれの本をどう読めば、自分の考えにつなげていけるか、も書かれています。引用してある本は、非常に価値あるものが多いので、これをとっかかりにして、読んでいってほしいです。

(本記事は、『たった一度でもすべてをかけたことがあるか』から抜粋、一部編集したものです)