事実、アニメ界の巨匠である宮崎駿監督ご自身が、著書『折り返し点』(岩波書店)で次のように仰っています。

「絵本とアニメーションの関係で言えば、いい絵本をアニメーションにしてしまっていいのかという問題が僕らの間にはあります。

 絵本は、余白だらけで、逆から読んでもいいですし、好きなところだけ見てもいいですし、とにかく一度通過した絵本を自分の好きなように何度も読んで、いつも傍らにあるという状態がいいんだと思うんです」

「ただ、基本的には、ビデオのスイッチをつけるということと絵本を開いて見るということは本質的に全く違う行為だと思います。映像は、見ている見ていないに係わらず一定のスピードで送りだされる一方的な刺激ですが、絵本は、違います。

 今のように子どもたちが、映像に頼れば頼るだけ、これからは現実の生活の中で、絵本を楽しむような時間が必要になってくるんじゃないですか」

 これは大人も同様で、文字だけの本を読むよりも、動画サイトを見ているほうが、脳は受け身なので楽に決まっています。しかも最近は、ユーチューブよりTikTokのほうが若者にとっては主流ですから、動画であってもより短いものが好まれます。