読書は習慣化することが大事です。10代や20代でほとんど本を読んでこなかったという40代の人にとっては、ある程度ボリュームのある書籍を1冊読了するのは、それなりに負荷のかかる作業となるでしょう。

 ユーチューブの映像ならずっと見ていられるのに、なぜ読書は疲れるのかといえば簡単な話です。映像のほうが脳は楽ができるからです。

 人の脳というのは入ってくる情報が少ないほどそれを補おうとしますが、映画は黙っていても映像や音が情報として視覚や聴覚をとおして脳に飛び込んできます。

登場人物の声をイメージで補い
脳の「聴覚野」がフル回転

 しかし、本はこちらから狩りに行くように、読みに向かっていかないと入ってきませんし、理解もできませんので、映像作品を見るときより脳が活発に働いているのです。

 たとえば、小説に登場する人物の会話部分は、実際には声が聞こえてきませんが、想像上の声で脳の「聴覚野」という部位が活性化しているのだそうです。

 芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を読んでいるとき、人はお釈迦様の声を「こんな声かな」と無意識にイメージして脳内で再生し、表情を空想し、金色の蕊(ずい)の「何ともいえない好い匂い」がどんな香りであるかを、脳をフル回転させて想像しているのです。