冷戦の終結後、核の悪夢から解放されるとの期待が高まった。長年対立していた大国が核弾頭の廃棄で合意し、核兵器の拡散を食い止めようと協力した。だが今やその期待は消え去ろうとしている。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は先月、核兵器使用に関する新ルールを打ち出し、自国防衛のために核兵器を使う用意があるとのシグナルを改めて発信した。北朝鮮の核兵器は増大の一途をたどる。イランは使用可能な核兵器の開発に近づいており、中東で軍拡競争が起きる懸念が高まっている。米ロが合意した二つの重要な核軍縮条約の一方(中距離核戦力全廃条約=INF全廃条約)はすでに失効した。もう一つは、両国が配備できる核兵器の数を制限するもの(新戦略兵器削減条約=新START)で、2026年初めに失効する。核保有を宣言した国々が冷戦時代に誓った軍縮はかつてないほど非現実的に思われる。