FRB(米連邦準備制度理事会)は「9月利下げ開始」が確実視されるが、米大統領選挙での「もしトラ」の可能性は消えておらず、トランプ前大統領が掲げる関税引き上げが実施されれば国内物価を1.8%押し上げる圧力となり、移民流入規制強化も労働需給を再び逼迫(ひっぱく)させる。世界は「インフレ局面」に逆戻りする懸念がある。(三井住友銀行市場営業統括部チーフ・マーケット・エコノミスト 森谷 亨)
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FRB「9月利下げ開始」確定的だが
「もしトラ」のインフレ再燃リスク残る
米FRB(連邦準備制度理事会)は9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で4年半ぶりの利下げを決める見通しで、一足先に利下げに転じた欧州中央銀行も含めて、インフレ抑制の金融政策運営は節目を迎えている。
しかし、世界経済をけん引する米国の大統領選挙次第で不透明感が増す可能性がある。民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領との一騎打ちは、直近世論調査ではハリス氏に追い風が吹いているようだが、それでも僅差で勝敗の行方は予断を許さない状況だ。
とりわけ「トランプ再選」となった場合は、米経済や国際政治への影響はより大きいものになる。経済政策では対中関税大幅引き上げだけでなく、一律10%の輸入関税や移民流入規制の強化、「トランプ減税」継続が掲げられている。
いずれもインフレ促進方向であり、トランプ氏は金融政策への大統領の介入なども発言している。コロナ禍からの経済急回復やロシアのウクライナ侵攻による資源価格急騰が引き起こしたインフレがようやく収束に向かおうとしている中で、世界経済が再び「インフレ局面」に逆戻りするリスクにも注意が必要だ。