経済新局面を読み解くキーワードPhoto:Flownage Photos/gettyimages

経済回復は道半ばだが一方で人手不足
「インフレ下での低成長」に変化

 2024年4~6月期のGDP統計(1次速報値)が8月15日に公表され、実質GDPは前期比+0.8%(年率+3.1%)と2四半期ぶりのプラス成長になった。1~3月期に落ち込んだ自動車生産の持ち直しや、高水準の企業収益が賃金・設備投資に回ること等により内需が回復したことが全体を押し上げた。

 しかし、前期の大幅な落ち込み(前期比年率▲2.3%)の反動で大きく出ている面が大きく、前年比で見ると▲0.8%の水準にとどまっている。経済回復は依然として道半ばの状況であることに注意が必要だ。

 1~3月期まで4四半期連続で前期比マイナスだった実質個人消費も前期比+1.0%と5四半期ぶりに増加したが、前年比やコロナ禍前の水準をいまだ下回っている。

 日本銀行は、「賃金と物価の好循環」が想定通り進んでいるとして7月の金融政策決定会合で政策金利の0.25%への引き上げを決めたが、現時点で物価と賃金、さらに消費への波及は十分とは言えず、経済の「好循環」が機能しているとは言い難い。

 しかし、需要の回復が鈍いこと以上に重要なのは、少子高齢化が進展する中で日本経済の本質的な課題が需要不足による「デフレ脱却」から人手不足深刻化による「供給制約」へと変化しつつある点だ。

 6月の日銀短観では企業の人手不足感の高まりが続き、建築着工やソフトウエア投資で受注が伸び悩んでいるほか、インバウンド関連も需要が増える中でも交通、宿泊などで稼働率低下が目立ち始めた。

 日本経済は「インフレ下での低成長」という国民にとって望ましくない状況になり始めていることにこれまで以上に注意する必要がある。

 マクロ政策運営もこの「変化」を見誤らないことが重要だ。