少子高齢化と不動産不況、消費マインド低迷で中国経済の減速は長く続く可能性が高い。労働人口は足元でピーク時の2%減だが、2050年までに3割減り、若者層の6割が低価格を追求する。バブル崩壊以降の日本に酷似する状況だが、他の新興国でその大きな市場や「世界の工場」の役割を担える国は出ておらず、世界へのマイナス影響の波及が懸念される。(日本総合研究所主任研究員 野木森 稔)
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中国、長期的成長減速が避けられず
日本の長期停滞と同じ道
中国では、2024年4~6月期のGDP成長率は前年同期比+4.7%と、1~3月期の同+5.3%から減速し、政府の年間成長率目標5%前後の達成が難しくなってきた。
先行きへの不透明感が急速に強まっており、中国当局は24年の半ば以降、中国人民銀行による利下げや、車や家電の買い替えを促す補助金を拡充するなどの支援策を加速させている。
しかし、これらは中国経済が直面している中長期課題を克服するものではない。一時的に景気悪化を回避できても再び成長率低下に苦しむだろう。
中国は少子高齢化と不動産不況の深刻化、デフレマインドの広がりによる経済への下押し圧力は根強く、停滞は長期化する可能性がある。バブル崩壊後、日本が歩んだ道をなぞり始めているかのようだ。
中国経済へのデリスキング(リスク低減)を重視するこのところの経済安全保障重視の観点からは、混迷する国際政治のバランスを取り戻す要素になり得るとして歓迎されるかもしれない。しかし中国経済の“成長失速”の事態になれば需要面、供給面ともに世界経済へのマイナスの影響が大きくなることには注意する必要がある。