中国経済が減速している。1990年代のバブル崩壊後の日本と同じ道をたどるのか。台湾侵攻の可能性は?米国経済は景気後退するのか?特集『総予測2024』の本稿では、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏に直撃した。(国際ジャーナリスト 大野和基)
中国経済の未来は
バブル崩壊後の日本よりひどい
――今の中国経済をどのように見ていますか。
ここ最近の中国経済はぐらついているように見えます。中国は1990年代の日本のバブル崩壊と同じ道をたどるのではないか、と問い掛けてくる人もいます。それに対する私の答えは恐らくそうならない、というものです。中国の方がひどい状態になるでしょう。
――なぜそう考えるのでしょうか。まず日本経済について説明してください。
日本に実際に起きたことを見ると、多くの人が想像するほど壊滅的なことではありませんでした。よく耳にする話は、こういうものです。80年代末期、日本は途方もない株と不動産のバブルを経験した。それは最終的に崩壊し、経営難に陥った銀行と過剰な企業債務が残り、それが長い景気低迷につながった――。
もちろんこのストーリーには幾分かの真理がありますが、日本の相対的な衰退の最も重要な要素が抜けています。それは、日本の生産年齢人口が90年代半ばから、かなりの速さで下り坂になっているということです。
しかし、日本の人口動態と比べて、日本の経済の落ち込みはそこまでひどくありません。人口動態に合わせて調整すると、日本は著しい成長を遂げています。1人当たりの実質所得は45%も上昇しているのです。
日本は大量の失業者を出さず、就業率は高いままです。米国の就業率よりもずっと高い。何十年も前から、日本に国家債務危機が起きるといわれてきましたが、実際には起きていません。つまり私が言いたいのは、日本は、繁栄と社会的安定性を維持しつつ、困難な人口動態の問題にいかに対処するかについてのロールモデルになるのではないか、ということです。
――中国は、バブル崩壊後の日本と同じ道をたどるのでしょうか。
次ページからは、クルーグマン氏が現在の中国とバブル崩壊時の日本との決定的な違い、中国の台湾侵攻で起こる米中戦争の意外な結末を直言する。また米国経済はリセッション(景気後退局面)入りを免れたのか、クルーグマン氏が「今かなり正確に言えること」とは?次ページで一挙に明かしていく。