習近平にとっての「敵」は
反対者ではなく未解決問題
中国民主化研究とは中国共産党研究である、という立場を取る本連載にとって、共産党の正統性、そして党を率いる習近平総書記(以下、敬称略)の権力基盤がどうなっているかをリアルタイムでモニタリング(定点観測)することは、極めて重要である。
2012年秋に総書記、13年春に国家主席に就任して以来、習近平は「反腐敗闘争」を大々的に展開し、「従厳治党」という中国語の言葉にあるように、党内を厳しく治めるべく、引き締めを強化してきた。
例として、今年1~9月、反腐敗闘争を実行する中央規律検査委員会の統計によれば、腐敗案件で受け取った通報が270.3万件、立件したのが64.2万件、処分した役人(党、政府、軍、国有企業などを含む)が58.9万人、うち地方の省長や中央の部長級幹部が53人とのことである。
習近平は、解放軍内の粛清も大々的に断行している。李尚福国防部長、魏鳳和元国防部長が腐敗などが原因で失脚し、党籍をはく奪された。装備系やロケット軍などを中心に、腐敗摘発の嵐が吹き荒れてきた。
これらの闘争や粛清が行われる過程で、それらの決定者と実行者である習近平に対する不満や不快は広範に広がっている。恐怖政治が敷かれる中、体制内部における緊張感は極限までに高まっており、しかもそれが「高止まり」しているのが現状であろう。