坂爪 今の福祉にはそういった視点がすっぽり抜けています。福祉は人としての幸せを追求するためにあるものです。そこから性の問題を切り離して考えるのは難しいと私は思います。

大川 知的障がいを持つ女性が風俗店で働いているケースも多いと聞きます。これについてはどうお考えでしょうか?

坂爪 冒頭に紹介したように、私は「風テラス」という風俗で働く方々の支援を6年ほど継続的にやっています。そこで感じるのは、風俗店では軽度の知的障がいを持つ方がかなり多く働かれているということです。

 ただし、彼女たちが風俗店に一方的に利用されて搾取されているのかというと、そうとも言い切れません。風俗店で働くことで自尊感情が高まる場合もあるからです。今までずっと家族や周りから怒られてきた人たちが、風俗の世界で認められることもあるんです。

大川 風俗業界に入ってからメイクを覚え、「かわいいね」と言われた経験が本人の自信につながることもある。当事者の中には、肯定的な評価を受けて喜びを感じているケースもあるんですね。

坂爪 本人が自己肯定感を抱くのは悪いことではありません。その一方で、自己肯定感を得られる場所が風俗店に限られてしまうことが、その人にとって本当に望ましいことなのかという根深い問題もあります。本来は、地域や学校、家庭も含めて、自己肯定感を高められる場所の選択肢が増えてほしいと思います。