実際に研究を始めてみると、性欲は三大欲求のひとつとされているのに、性風俗は一種の娯楽、エンターテインメントとして捉えられることがほとんどでした。私はもっと別の捉え方ができるのではないかと考えたんです。
大川 エンタメ以外のサービスというのは、どういうことですか。
坂爪 たとえば性教育の場を提供したり、性の問題で困っている方の相談窓口を作ったりすることです。特に障がいを持った方、性に関して困っている方への支援が日本にはほとんど存在しませんでした。自分の研究結果を世の中へ還元したいという思いもあり、自分で事業を始めることにしたんです。
大川 これまで世の中になかったものを始めるのは大変だったと思います。射精介助サービスは従来の枠組みでは「風俗店扱い」になるそうですが、坂爪さんが書かれた書籍を読む限り「風俗店に行く」という感じではありませんよね。利用者さんも介護する側の女性も、ある種の介護サービスとして捉えている印象を受けました。
坂爪 おっしゃるとおりです。ホワイトハンズの利用者さんには、脳性麻痺の方も多くいらっしゃいます。そういった方はケアを受けることに慣れているので、食事や入浴などと同じ文脈で性の介護も受けています。
大川 それを風俗業としてくくるのは適当なのでしょうか。もっと別の枠で公的支援を受けられてもいい気がします。