怒気をはらんだ社員の表情を
一瞬で変えた経理社員の一言

 私のクライアント先に1人の経理社員がいました。その女性は、経費精算や領収書などを提出したり、経理処理の相談にやってきたりする人に対していつも「今日も素敵な笑顔ですね!」「そのアクセサリーかわいい」「いつも一番に経費精算を出してくれて本当に〇〇さん優しいです……」など、とにかく「何か一言褒める」ということをしていました。

 最初、「人と話すのが好きな人なんだな」くらいに思っていましたが、そうではないことがわかった出来事がありました。

 ある日、いつもは穏やかでムードメーカーのAさんが、湯気が見えそうなくらい怒気をはらんだ表情で経理社員の彼女に書類を提出しに来ました。直前に現場部門の会議で意見の相違で言い合いになったようで、顔は怒ったまま、夜も遅かったので服装も乱れ、時計やネクタイなども身に着けておらず、彼女の横に座っていた私は、「申し訳ないが、さすがに今日のAさんは褒めるところが見つからない……」と思いました。

 それに、もし私がAさんの立場だったら、不機嫌な時に褒め言葉を言われても、「そういうのは今いいから」と、逆に怒ってしまうかもしれないなと思いました。もし自分なら「書類ありがとうございます。お疲れさまでした」と最小限のコミュニケーションで終わらせるだろうなと思い、彼女もさすがにそうするしかないのではと見ていました。