しかし、彼女は違いました。「Aさん、お疲れ様です!あ、その山吹色のジャケット、Aさんのお肌の色味とぴったり合ってとても素敵ですね!」と明るく出迎えたのです。

 するとAさんは、怒りの表情がスッと消えて、「なにそれ……そんなこと言っても何も出ないよ」と苦笑いして、いくつか言葉を交わして「どうもありがとう」と言って、いつもの穏やかな表情で席に戻って行かれました。

 私は思わず感動して「山吹色なんて、小学校の図工の時間以来、口にしたことがないよ。すごいね。よくとっさにあんな褒め言葉が出たね」と興奮して彼女に話しかけました。

 彼女は「ふふ」と笑っていましたが、その時に私は彼女が「自分のところに来た人には必ず何か1つ褒める」ということを「仕事・使命」にしていたのだなと気付きました。

 社交辞令ではなく、毎回本気で人を褒めていたということです。そうでないと、瞬時にその人の良いところを見つけて的確に人を褒めることはできないと思います。

「本気の誉め言葉」を徹底し続けた
彼女の葬儀で見た光景

 そんな彼女でしたが、残念ながら先日、病気で他界しました。葬儀は職場からは距離のある場所で行われたのですが、本当にたくさんの人達が参列に訪れていました。