社長はもちろんのこと、正社員だけでなく契約社員やアルバイトの方々、私のような業務委託の人達、そしてその会社をすでに退職して転職していた人達も訃報を聞き、有給休暇をとってレンタカーや特急電車などに乗って駆け付けてきていました。もちろんAさんもその中にいらっしゃいました。

 葬儀場に職場がよみがえったようで、その光景を見て私はまた感動してしまいました。彼女はこれだけたくさんの人達を褒め続けていたのです。

「会った人をひと言ほめる」を徹底した経理社員が死去→葬儀で見た「驚きの光景」『メンターになる人、老害になる人。』前田康二郎(クロスメディア・パブリッシング)

「褒め過ぎは甘やかすことにもなるから良くない」という意見もわかります。ただ、的外れな褒め言葉や社交辞令の褒め言葉ではなく、本気の褒め言葉であれば、やはり人というのは嬉しいですし、つらい時には励みになるのだなと、彼女の葬儀に訪れたたくさんの人達を見て改めて思いました。

 彼女は経営者でも役員でもトップセールスでもプロジェクトリーダーでもない、フラット組織の1人の経理社員でした。そのような立場であっても「褒める」ということに徹底することで、たくさんの人達に良い影響を与えられることを教わりました。

 彼女は40代で生涯を終え、私も訃報を聞いた時に本当に悲しかったです。しかし、葬儀に集まったたくさんの人達を見て、彼女は彼女の筋を通したというか、本当に天晴な人生だと思いました。その場に集まった人達にとって、彼女はメンターであり、これからもメンターであり続けることと思います。