日本では7人に1人の子どもが貧困状態にあり、OECD加盟国で最悪の水準だ。これが子どもたちの「体験格差」にも現れている。スポーツや音楽などのクラブ活動、キャンプ、旅行、お祭り、博物館や動物園に行くといった体験がゼロの子どもが、年収300万円未満の低所得家庭では3人に1人もいるという。その実情とは。 ※本稿は、今井悠介『体験格差』(講談社現代新書)の一部を抜粋・編集したものです。
楽しい「体験」は
将来にも影響を与える
なぜ「体験」が子どもたちにとって重要なのだろうか。言い換えれば、「体験」にはどんな価値があるのだろうか。
まず、「体験」は往々にして楽しいものだ。海は楽しい。動物園は楽しい。サッカーは楽しい。絵を描くのは楽しい。旅行に行くのも楽しい。
もちろん、プールで泳ぐのが楽しくない子どもはいるし、ピアノの練習が楽しくない子どももいる。すべての「体験」が、すべての子どもにとって楽しく感じられるわけではない。だが、それぞれの子どもにとって楽しいと感じられる「体験」が、1つはきっと存在するだろう。
さらに、「体験」の価値はその時々の楽しさだけではない。例えば、「体験」は子どもの社会情動的スキル(非認知能力)にも関係するとされている。つまり、子どもたちへの短期的な影響(楽しさ)だけでなく、かれらの将来に対する長期的な影響もある。
だからこそ、その格差を放置しておけないわけだ。たまたま裕福な家庭に生まれた子どもたちばかりが様々な「体験」の機会を得られ、それによって大人になってからの収入などの格差が再生産されているとすれば、とてもフェアな社会とは言えないだろう。