体験格差とは、今を生きる子どもたちにとっての楽しさや充実感の問題でもあり、将来の人生の広がりに関わるより長期的な問題でもある。そのどちらも極めて重要だ。そうであるにもかかわらず、子どもたちの「生まれ」によって「体験」の機会に格差があることは、この社会ではあたかも仕方がないことのように捉えられてきてしまったのではないか。

月収が18万円を割り込む
相対的貧困家庭の現実とは

 日本では、「相対的貧困」の状況にある家庭が1割強もある。逆に言えば、8割以上の人々は「相対的貧困」を生きておらず、その多くは一度もそういった状況を経験したことがない。

 そのため、多くの人にとり、「相対的貧困」のリアルな状況を理解することは必ずしも容易ではないだろう。重要なことは、できるだけ具体的な金額感をイメージしてみることだ。

 例えば、母親と小学生の子ども2人のひとり親家庭の場合、手取りの収入(可処分所得)が18万円を割り込んでくると、相対的貧困の範疇に入ってくる。

 この18万円の中から、家賃を払い、3人分の食費を払い、光熱費を払い、スマホなどの通信費を払い、場合によっては、子どもたちの将来のための貯蓄もしていく。

 子どもが大きくなれば食費は上がり、猛暑になれば光熱費が上がる。物価の高騰は、文字通り家計を直撃する。数百円、数千円が大きな違いをもたらす。どんな出費にも、慎重にならざるを得ない。