与党批判だけが
「政治的」と言われやすい背景

 まず、長瀬さんの投稿は、皮肉っぽくはあるものの、強い言葉を使って自民党や裏金問題を批判しているわけではない。それでもなお、強い反発を受ける。

 これは一つには、与党批判のときだけ「政治を語るな」と言われやすい、という問題がある。

 たとえば最近、講談社の漫画誌『モーニング』に連載中の『社外取締役 島耕作』の中で、辺野古の新基地建設に抗議する人が「日当」をもらっているというセリフが、まるで事実かのように掲載された。「日当デマ」は、以前から基地建設に抗議する人に浴びせられてきたものであり、結局、編集部と作者がお詫び文を出した。

「辺野古」というキーワードについてネット上で特に顕著な傾向として見られるのは、与党寄りの人は新基地建設に抗議する人に対して冷たく、野党寄りの人は抗議する側に立つことだ。

 今回の場合も、作品内のセリフに抗議したのは野党支持者が多く、擁護したのは与党支持者が多かった(少なくとも筆者にはそのように見えた)。話が長くなって恐縮だが、漫画家がその作品やSNS投稿で野党寄り(あるいは、そう受け取られる)の主張を行うとき、「漫画に政治を持ち込むな」「キャラクターに政治的発言をさせるな」と批判が上がることがある。

 たとえば、『遊☆戯☆王』の作者・高橋和希さんは2019年の選挙前に自身のInstagramで「独裁政権=未来は暗黒次元(ダーク・ディメンション)!」などとセリフを書き込んだキャラクターのイラストをアップして批判を受け、その後謝罪している。

『社外取締役 島耕作』の場合、そのセリフを批判する人はいても、「マンガに政治を……」といった批判はほとんどないように見えた。