SNSを観察していると、批判を嫌う若者層が好むのが「中立」「俯瞰」「冷静」「バランス感覚」といった言葉である。熱く憤るのではなく、メタ的視点で考えて賢く振る舞いたい。そのような感覚からすると、「裏金でパンクを直していただけませんでしょうか#自民党」というような「政治的発言」は「ダサい」のかもしれない。

驚きだったアミューズの
「政治的」声明

 そんな中で驚いたのが、芸能事務所アミューズの声明である。アミューズは10月30日、同性婚訴訟の控訴審判決が東京高裁で行われ、違憲判決が出たことを受け「東京高裁という、最高裁判所に次いで影響力を持つ裁判所がそのような判決を出したことの重みは計り知れないと思います。各人が持って生まれた個性に誇りをもって生きていける社会の実現を願うばかりです。」などの内容を含む声明を発表した。同性婚に賛成すると受け取れる内容の声明である。

 これは明らかに「政治的」な声明であり、日本の芸能事務所がこのようなコメントを発表することは珍しい。当然、同性婚に賛成する人はこの声明を肯定的に受け止め、そうでない人は逆の反応を示しているが、人気芸能人が多く所属する大手事務所が、このようなスタンスをとったことの影響は、今後必ずあるだろう。

 同性婚訴訟は各地で行われており、高裁での違憲判決は2回目。このタイミングでの声明となった理由はわからないが、声を上げてきた人たちを勇気づけたのは間違いないのではないか。

 個人的には、芸能人であれ一般人であれ、政治的スタンスを明らかにして発言する人がもっと増えてもいいと考える。街場からの発信が増えることが、低迷する投票率の引き上げに、少なからず貢献すると期待するからだ。