海の上に建つ家々は
「日本のベネチア」

 さらに、日本の素朴さを味わえる宿へのニーズが高まっている。

 世界文化遺産である合掌造りの白川郷や五箇山、茅葺屋根の宿場が建ち並ぶ会津の大内宿や中山道の妻籠宿・馬籠宿などの古民家に、宿泊する外国人の姿を多く見かけるようになっている。

 京都府の日本海沿い、天橋立近くにある漁村の伊根は「舟屋」と呼ばれる1階に船を収納し、その上に居住するスタイルが江戸時代から続いてきた。

 伊根湾の沿岸には、「伊根の舟屋」と呼ばれる建屋が約230軒、軒を連ねている。その光景が珍しく多くの人が見学に訪れるが、これらの舟屋や母屋は個人の所有。だが、舟屋に宿泊体験ができるので、行く前にチェックするのがおすすめ。新鮮な海の幸と温泉を堪能できる。

 コロナ以降、アジアからのツーリストを中心にインバウンド客が急増。彼らは「日本のベネチア」と絶賛し、日本人とはかなり異なった目線でこの景観をとらえており、惹きつけられているようだ。民宿とはいえ1人1泊1万円以上のところがほとんどで、部屋数が少ないうえオンシーズンは予約がとりづらくなっている。

写真:伊根の舟屋(京都府与謝郡伊根町)伊根の舟屋(京都府与謝郡伊根町) 同書より転載