リーは何百というコミックスの原作も書いていた。しかし吹き出しの台詞だけでなく、実はコミックスの編集後記こそがリーの真骨頂だった。
そしてお手紙のページで彼が書いたファンレターへの返事が、リーとファンたちを固い絆で結びつけた。リーの文章は親しみやすく活気に溢れ、「信じる者よ、前を向いて進め」とか「エクセルシオール!」といったキャッチーな文句が躍っていた。
そして何より、リーは読者を煽てるのが巧かった。自分たちはコミックスという娯楽を理解する洗練された消費者だと思わせた。
コミックスにしがみついていても
理解されずやりがいもない
「アメイジング・ファンタジー」の15号で初登場したスパイダーマン(スタン・リー作、スティーヴ・ディッコ画)は、リーの次のような口上で始まった。
「コスチュームを着たヒーローはお好き?ここだけの話、コミックス業界で働いてる人はあいつらのことを『丈の長い下着のキャラクター』と呼んでるんだよ!皆ご存知のように、あいつらヒーローは大勢いすぎて珍しくもない!しかしだ、多分皆はこのスパイダーマンを読んで、こう思うかも……これは一味違う!」