今年の出生数は予測より20年ほど早く70万人を割り込みそうで、少子化に歯止めがかかりません。一方で、高齢者に対する風当たりは強く、「集団自決」「安楽死」といった言葉が東大出のエリートから吐かれております。こんな時は、マフィアの2代目ドンの言葉に耳を傾けてみましょう。(解説/僧侶 江田智昭)
マフィアのドンが戒める言葉
フランシス・フォード・コッポラ監督不朽の名作『ゴッドファーザー』3部作は、私がとても好きな映画作品です。今回の掲示板は、『ゴッドファーザーPARTIII』(1990)劇中のセリフから。
Never hate your enemies. It affects your judgement. ―― 敵を憎むな。判断に影響する。
ニューヨークマフィアの五大ファミリーの一つ、「コルレオーネ・ファミリー」の長で、“ゴッドファーザー”の異名を取るヴィトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)。その三男で、2代目のドンとなるマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)が、おいであるヴィンセント・コルレオーネ(アンディ・ガルシア)に対して発した言葉です。ヴィンセントは短気でカッとなりやすい性格だったため、マイケルは周囲のマフィアグループへの報復を戒める意図でこう言ったのでした。
仏教の教えの中でも、憎んだり、恨んだりすることは厳しく戒められています。この連載の中でも何度か「怨みは怨みによって息(や)むことはない」というお釈迦さまの言葉を紹介しました(第74回参照)。浄土真宗の宗祖である親鸞は、恨みや憎しみに関して『教行信証』の中で次のようにおっしゃっています。
瞋憎(しんぞう)の心、常によく法財を焼く。
「法財」とは、基本的には「法(仏の教え)という財産」になりますが、ここでの「法財」については「功徳」や「自分という存在」などさまざまな意味で解釈されています。
仏教の教えでは、周囲とのつながり(縁起)の中に自分が生かされていることを説きます。「瞋(いか)りや憎しみの心」は周囲とのつながりを破壊し、それによって「自分という存在」をも破壊してしまうのです。