恨みや憎しみの「因果応報」
掲示板の言葉を残したマイケル・コルレオーネも、若い頃には多くの人々を恨み、殺害してきました。『ゴッドファーザー』(1972)や『ゴッドファーザーPARTII』(1974)をご覧になった方は、年老いたとはいえ、あのマイケルがこのような言葉を発することに違和感を覚えたかもしれません。
マイケルは、コルレオーネ・ファミリーを守るために多くの殺しを実行・命令してきたわけですが、そのような残虐な行為を積み重ねることは当然、多くの人を悲しませ、恨みを買うことにつながります。それこそまさに、周囲とのつながりを破壊する行為に他なりません。そうした行為の帰着が、最愛の娘メアリーの殺害という悲劇に至りました。ちなみにこのメアリー役は、実の娘であるソフィア・コッポラが演じています。
『ゴッドファーザーPARTIII』のラストシーンでは、娘を亡くしたマイケルの孤独で抜け殻のような姿が描かれています。最愛の娘の死から先、「自分という存在」が完全に壊れてしまったマイケルの姿に何を見ることができるのか。
これはある意味、多くの人の命や大切なもの(周囲とのつながり)を暴力で破壊してきたことへの代償、いわゆる「因果応報」です。つまり、ゴッドファーザーシリーズは、「自分の行ってきたことが自分に返ってくること(因果応報)を表現した作品」ともいえます。
世の中には「恨みや憎しみが活動の原動力」などと公言する人もいます。しかし、そうした心の動きは、周囲との関係性を歪んだものにするだけでなく、自分自身の正確な判断を鈍らせることにも当然つながります。
恨みや憎しみを原動力にする生き方だけは、くれぐれも避けたいものです。