普段から感謝の気持ちを積極的に伝えよう
もちろんトラブル発生時だけではなく、常日頃から感謝の気持ちや、良い取り組みを言葉にして伝える行動も習慣にしたい。
「あなたたちのおかげで、快適に仕事ができています。ありがとうございます!」
「心地よい時間を過ごすことができました。感謝しています!」
このような気持ちを普段から言葉にできているだろうか。文句を言うときだけ登場する残念な人になっていないだろうか。
とくに総務や営業事務、ITインフラの維持運用など、決して派手ではないが重要な仕事を担う人には日頃から感謝を伝えるよう心がけたい。
このような仕事に従事している人たちは、なかなか褒められることがない。一方でトラブルがあると猛烈に批判され責任を追及される。大切な仕事であるにもかかわらずリスペクトされず、人も予算も削られ継続できなくなってしまう。なり手も減る一方だ。そうなってしまっては文化どころか、組織や社会の屋台骨もろともボロボロになる。それではいけない。
普段から感謝の気持ちを伝える。それは、世の中になくてはならない仕事に従事する人たちを守る尊い行為でもある。リスペクトや感謝の気持ちを日々伝え、大切な仕事を守るための合意形成をしていこう。
メディアの姿勢にも、あら探し文化が見られる
他者を追及して悦に浸ろうとするのは、規範遵守の意識が強い日本人特有の本能ともいえるのかもしれない。
ちょうど筆者がこの原稿をしたためていた2024年1月頭、民間の旅客機が羽田空港の滑走路に着陸した際、海上保安庁の専用機と接触し、炎上する大事故が発生した。奇跡的に旅客機の乗員と乗客共に死者はゼロ。インターネットでは機長や乗務員の対応を称賛するコメントも相次いだ。海外のニュースメディアでも、この航空会社と乗務員の冷静かつ的確な対応を称賛する記事が大きく掲載された。
その一方、日本国内で行われた記者会見では、大手のオールドメディアを中心に責任追及のためのあら探し、犯人探しを思わせる質問の嵐。乗客が撮影した機内の動画などから、乗員の対応の不備をあげつらい、揚げ足を取るようなコメントも散見され、筆者も見ていて気分が悪くなった。
日本人は感謝が苦手なのかもしれない
インターネット通販のレビューに厳しめのコメントだけ寄せる人、SNSでは批判や反対意見を述べるとき「だけ」登場する人たちもいる。どうも日本人の多くは、感謝の気持ちを伝えるのが苦手なようだ。アンケート調査などを実施しても満点をつける人は少なく、中央値付近に回答が偏る傾向があるという。
しかし批判ばかりでは世の中良くならない。せっかくのよい製品やサービスを残し続けることができない。なにより、目の前の相手との関係性も良くならない。
遠慮や恥じらいの気持ちは捨て、積極的に他者の良いところを言葉にしよう。相手の良い面を指摘しようとすると、やがて自然と相手の良い面が目に留まるようになる。言語化の習慣は、観察眼を養うことにもつながるのだ。
・責められている人たちがいたら、良いところをあえて言葉にして伝えてみる
・日頃から感謝やリスペクトの気持ちを伝える
(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)
作家/企業顧問/ワークスタイル&組織開発/『組織変革Lab』『あいしずHR』『越境学習の聖地・浜松』主宰/あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/プロティアン・キャリア協会アンバサダー/DX白書2023有識者委員。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『職場の問題地図』(技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など著書多数。